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交通事故に関する判例集である自保ジャーナルに、当事務所弁護士丹羽洋典が交通事故被害者の代理人弁護士として関与した判例が下記のとおり掲載されました。


名古屋地裁平成26年5月28日判決(1926号144頁、控訴後原審認定額から上乗せ和解)


 本事案は、凍結した路面でスリップ事故を起こしたタクシーの後部座席に乗車していた、航空会社ラウンジ勤務の32歳の女性が、窓ガラスに顔面をぶつけ、右頬部に9cmに及ぶ線状痕を残したもので、自賠責保険による被害者請求での認定(9級16号)どおり、67歳まで35%の労働能力喪失を認めたというものです。
 一般に、顔面の醜状痕は、労働能力に影響を及ぼしにくいとされ、容姿が重要視される職業に従事している場合や若い女性などを中心として認められ、また、旧自賠責基準の7級12号(労働能力喪失率56%)に該当する事案であっても、労働能力喪失率を20%に減じられたり、喪失期間を一定の年齢の間に制限されることが多く見られました。
 しかし、この判決では、一般の接客業に従事する32歳の女性で、35%の労働能力喪失率と労働可能年限である67歳までの逸失利益が認められ、画期的な先例性をもつものとなりました。
 被告からは控訴されましたが、控訴審でも原審の判断が認められ、原審の認容額から若干の上乗せされた金額で和解が成立しました。
 顔に一生残る目立つ傷を負わされ、傷を隠すために必死に努力をしなければいけなくなったり、人から傷を見られたり指摘されたり、人前に出られなくなったりと人生を一変させられたにも関わらず、顔の傷は後遺障害逸失利益の場面では、非常に低く算定されてきました。
 今後、この判決が、顔などに傷を負わされた被害者の救済のための重要な指針になっていくことと存じています。


名古屋地裁平成26年11月7日判決(1940号170頁・確定)


 本事案は、道路の左端を飲酒してふらふら歩きをしていた被害者が、正面から来た自動車に跳ねられたというものです。
 一般に歩行者は、歩道等が設けられていない場合、原則として道路の右端を通行しなくてはならず(道路交通法10条1項)、道路の左側端を歩行していて普通乗用自動車と衝突した事案では、歩行者に5%の過失が認められ、ふらふら歩きをしていた場合は、さらに5%の過失が加算され、10%の過失が認められることになります(別冊判例タイムズ38・44図、赤い本2016年版上巻279頁)。
 しかし、本事案では、被害者が歩車道の区別のない道路左側端を、ふらふら歩きをしていたと認定されたにもかかわらず、被害者の過失を5%に留めることができました。


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