後遺障害認定
近時のむち打ち損傷の後遺障害認定実務の傾向について
頚/腰椎捻挫・打撲等のいわゆるむち打ち損傷については、交通事故による受傷で最も発生件数が多く、後遺障害認定を行う自賠責保険損害保険料率算出機構での後遺障害等級認定実務の状況につきましては、交通事故被害者の皆様の関心が大変高いところです。
当事務所では、平成24年の設立以来むち打ち損傷による神経症状の後遺障害認定要件等について多数ご案内して参りましたが(こちら①②③をご覧ください)、最近の認定傾向について弁護士丹羽の印象を以下述べます。
異議申立ての重要性は変わりありません
むち打ち損傷の第14級9号の後遺障害認定については、初回の被害者請求もしくは事前認定で非該当とされるケースは未だ多く見られます。
特に最近では、初回の被害者請求でむち打ち損傷の後遺障害等級非該当とされるケースが増えてきており、異議申立で第14級9号が認定されている印象です。
そのため、当事務所でお伝えしておりますむち打ち損傷後の第14級9号認定要件を満たしているケースでは、引き続き異議申立てによる再審査を受けることが重要であることに変わりはありません。
当事務所で異議申立により14級第9号の認定を得た実際の異議申立書については、こちら①②ブログをご覧ください。
引き続き画像所見が重視されています
令和2年10月28日の本ブログ記事でも詳しくご紹介いたしましたが(記事はこちらです)、むち打ち損傷の第14級9号の神経症状の認定に際しても画像所見、特にMRI画像での脊髄/脊柱管もしくは神経根圧迫・狭窄所見が重視される傾向はむしろ強まっています。
接骨/整骨院への通院がメインの場合は消極に解されるように思われます
むち打ち損傷の第14級9号の神経症状の認定要件としては、通院実績(通院期間及び通院頻度)が重視され、以前は病院やクリニックでのリハビリに代えて接骨/整骨院(以下総称して「接骨院等」といいます。)への通院についても通院実績として考慮されていました。
しかし、近時の傾向として、接骨院メインの通院だと後遺障害認定が否定されるケースが目立つようになってきました。
もちろん、当事務所としても接骨院での施術がリハビリの代用であり症状の改善効果に多大に寄与している点については否定しませんが、最近では残念ながら本来的に医療行為ではないという点が重要視されるようになってか、今まで問題なく第14級9号が認定されていたように思えるケースであっても、異議申立によっても非該当とされることが散見され、それが接骨院での施術中心であったという事案がみられてきました。
接骨院だからダメというわけでは全くなく、最近より厳しくなってきた損保会社からの施術費の打ち切りを避けるため、改善傾向を強調したいがために施術証明書に「良くなっている」、「施術により症状は改善している」などの記載が以前より目立つようになっていることが理由かもしれません。
自覚症状欄への症状による具体的な支障の記載について
最後に自賠責後遺障害診断書の記載について触れます。
近時、後遺障害診断書の自覚症状欄に、症状内容だけでなく、労働及び日常生活上の具体的支障が記載されていることが目立つようになってきました。
弁護士丹羽は、後遺障害診断書の自覚症状欄は、例えば「頚部痛、右前腕尺側から第3~5指にかけてのしびれ感」などといった、症状内容のみを記載すれば足りると考えており、「首の痛みや手の痺れにより長時間のパソコン作業が困難」などの症状による支障は自覚症状欄に書くべきではないと考えています。
その理由は、あくまでも自覚症状欄は「症状」を書くべきところで、この欄に症状が記載されていないと後遺障害審査の対象とならない大切な箇所であり、余計な記載をしていただくよりは、しっかりとすべての自覚症状を記載いただきたい点にあります。
また、自覚症状欄にすべての労働及び生活上の支障を記載することはできませんし、そのような煩を多忙な医師の先生方に負わせるべきではありません。
さらに、例えば、「長時間のPC作業をすると首が痛む」などの後遺障害認定に必要な症状の常時性に疑いをもたせる記載がなされてしまう恐れもあります。
確かに、損保料率機構では、局部の神経症状の後遺障害であっても症状による労働及び生活上の支障については、ある程度等級認定の参考にされていると思われますが、わざわざ医師の先生に自覚症状欄に記載いただくのではなく、被害者が自分で書面にまとめて提出すれば足りますし、当事務所では、依頼者様に症状による労働及び日常生活上の支障等をまとめて記載いただく専用の「報告書」(書式はこちら)を作成いただき、被害者請求の際に提出しています。
自覚症状欄に症状による具体的な支障を記載いただくことは決して無駄ではないと思いますが、それよりもむしろ本来の記載事項であるすべての症状を記載いただく方が重要であり、医師の先生方に無用な煩を負わせないようしていただければと考えています。
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