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大変久しぶりに、相手方損保会社担当者からよく理解できない主張がなされましたので、共有するとともにその適否を論じていきます。

皆さんご存じのとおり、兼業家事従事者の休業損害については、平成11年のいわゆる三庁共同提言以降、実収入額が女性全年齢平均賃金を下回っている場合、専業家事従事者と同様に取り扱う(女性全年齢平均賃金を基礎収入とする)ことが裁判例上も賠償実務上も定着しているのは今更いうまでもありません。

この場合、家事労働の休業中に受けていた給与収入は考慮せず、家事労働能力喪失の程度の判断の一材料として考慮されるに過ぎません。
そして、このことは、正社員、パート、専従者等従事している雇用形態によって異なるものではないというのが、現在の賠償実務上の取り扱いであると弁護士丹羽は理解しています。


損保ジャパン担当者の主張


自営業者の夫の専従者である兼業家事従事者につき、家事従事者としての休業損害を請求した事案で、相手方任意損保会社である損保ジャパン名古屋保険金サービス第二課の担当者は、当方の請求に対する回答書面で、

「当初ご本人様はご自営での専従者と聞いております。家事労働でご請求の場合は以下の金額が妥当であると思料致します。」として、当方の休業損害請求額の50%を認定しました。

「専従者であれば休業損害が半減される」という根拠が理解できませんでしたが、本日、電話で担当者はさらに以下のとおりの主張をしました(発言内容はそのままです)。

①ご主人の青色申告の手伝いをしていると良く見受けられる専従者として家族従業員ではないか。そうだと家事労働は半分ですよというそういう話。

②本来であれば給与所得者であれば家事労働は認められないんです。

③我々が家事従事者として認めるのはパートさん。いわゆる103万以下の課税以下の人で、自賠責もそう。

④要はその良くいう寄与率とかいうんですけどね。家事をナンボ日常生活の中で何割で、専従者として何割しているかというふうに考えたいなと。


上記損保ジャパンの主張の理解し難い点


発言①について

専従者の場合、家事労働に対する休業損害は半分になるという理屈は聞いたこともないですし、法理論的にも理解できません。


発言②について


給与所得者であっても、三庁共同提言の考え方が実務上の通例で、給与所得者だからといって家事労働者性が認められないことは全くありませんので明らかな虚偽です。


発言③について


冒頭記載したとおり、兼業家事従事者の場合、家事従事者か給与所得者のいずれで算定していくかの基準は女性全年齢平均賃金額になり、103万円以下ではありませんので、これも誤りです。
また、少なくとも当事務所で取り扱ったこの担当者以外の損保ジャパンの案件では、三庁共同提言どおりに解決していますし、もし損保ジャパンが本当に家事従事者として認めるのは年収103万円以下のパートだけだとしたら大問題です。
さらに、自賠責でもこのような考え方はしていません。


発言④について


この担当者は、専従者のみに家事労働と賃労働の「寄与率」を持ち出している点からすると、家業に従事することは家事の一部であると考えているのでしょうか。
家事従事者性については、賃労働の雇用形態が青色/白色専従者であっても、正社員であっても、パートであっても、基本的には現在の賠償実務上は区別していないというのが弁護士丹羽の理解です。

さもないと、専従者が従事する家業は家事の一部であると考えるか、同じ労働の提供であってもその提供先が家業か他者の事業かで区別することになりますがその合理的な根拠は見出し難いですので、専従者の家業への労働を不当に軽視する差別的な取り扱いになりかねません。

上記のとおり、この担当者の言動には誤りと思われる発言も多々あり、また、残念ながら弁護士丹羽にはこの担当者の説明ではその真意が良く理解できず話が嚙み合わなかったので、損保ジャパン本社宛に会社としての見解とこの担当者の真意を問い質したいと考えています。
また、損保ジャパンから回答がありましたら、ご報告します。


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