死亡事故について
否認事件での被害者参加のメリットについて
否認事件での被害者参加のメリットについて
当事務所では、従前より加害者が刑事手続で正式起訴された場合、被害者ご本人やそのご遺族の皆様に積極的に被害者参加をいただくことをお勧めしています。
その理由は、本ブログでもご紹介しておりますとおり以下の点を挙げております(被害者参加の詳しい概要や詳しい理由はこちらをご覧ください)。
1 被害者による尋問の内容や被害者の心情意見が量刑に影響すること
2 裁判官や被告人の面前で、直接被害感情を伝えられること
3 早期に刑事記録の開示を受けられ、公判前に事故の全貌を知ることできること
4 刑事裁判でより実効的かつ具体的な主張が可能となること
5 死亡事故の場合、心情意見を作成することで生前の被害者を悼み心に刻むことができること
民事事件に備え、特に否認事件では被害者参加をすべきと考えます
これらに加え、特に被告人が事故の事実を全部もしくは一部否定している否認事件ではより被害者参加のメリットは大きいと考えていますので、その理由を述べます。
通常の過失運転致死傷罪では、被疑事実を全面的に認めるいわゆる「認め事件」が多いのですが、例えばひき逃げの故意を争うような一部否認事件もしばしばみられます。
ところで、裁判で証拠による主要な事実を認定する度合いについて、通常お金の問題であり「通常人が疑いを挟まない程度」で足りる民事裁判とは異なり、刑事裁判では、刑罰を科し人の身体・生命の自由を奪う極めて重大な事実を認定することになりますので、より慎重に「合理的な疑いを挟む余地が無い程度」の高い証明が要求されます。
また、刑事裁判の主要な事実の立証責任はすべて検察官が負います。
そのため、否認事件の場合、担当検察官は相当本気で刑事裁判に取り組むことが多いと弁護士丹羽は考えています(もちろんどの事件でも本気だと信じていますが)。
そして、検察官による罪となる事実の構成やこれを裏付ける証拠の取り方やその吟味、立証の中心となる被告人質問は、皆さんかなり緻密で尋問も本当に上手で、公判中横で聞いている私も大変参考になりとても勉強になります。
また、否認事件を担当する検察官は大変優秀な方が多い印象で、参加をする被害者の方々への対応もとても丁寧で、細かな点まで説明していただけることも多く、検察官の考えを立証方針を即時かつ具体的に把握することもできます。
被害者参加をすることで、本気の検察官がどのように被告人の不合理な主張や弁解を崩していくのか、その事実の構成やその立証方法を目の当たりにすることができるのです。
当然のことながら、刑事裁判の後に民事事件が控えており、被告人(加害者)は民事事件でも同じような理屈でまた事実を否認をし、過失を争ってきます。
民事裁判で、代理人が加害者側の主張に対する反証に失敗してしまうと、不合理とも思える加害者の主張が認められてしまう恐れが往々にあり、その主張が全面的に採用されなくても過失割合に悪影響を及ぼすことも十分考えられます。
被害者参加をしない場合、事後に刑事記録という書面だけで刑事裁判の内容を知るだけですし(刑事裁判で採用されなかった証拠はその存在さえ知ることができません)、書面ではわかりえない立証方針や刑事手続での細かい内容を担当検察官に聞いたとしても教えてくれることはないと思いますので、民事裁判で事後に刑事記録しか見ていない代理人が刑事裁判での検察官と同じような訴訟活動ができるとは考えられません。
以上の点から、特に否認事件の場合、民事裁判でも検察官のような精緻な立証活動をし、被害者の皆様にとって到底耐えがたい加害者の不合理な弁解を排斥するために、被害者参加をし本気の検察官の精密な立証活動をしっかりと目と頭に焼き付け、来るべき民事事件に備えておく必要があると考えています。
死亡事故について
- 子どもや若年独身者の死亡慰謝料の基準を見直すべきです
- 大分市194km暴走死亡事故で、危険運転致死罪が認められました
- 危険運転致死傷罪の見直しの評価と大分市の時速194km暴走死亡事故について
- 高齢交通事故被害者の治療中の問題点について
- 現在の家族観や社会情勢の変化に即した家事労働者の賠償評価について
- 事故後持病の糖尿病が悪化し死亡した場合、事故と死亡との因果関係を認めた判例について
- 令和6年度も愛知県の自転車乗車用ヘルメット購入補助制度が実施されます。
- 否認事件での被害者参加のメリットについて
- 基礎収入で平均賃金を使用する場合は、事故「当年」の平均賃金です
- 糖尿病患者の方々が重大交通事故被害に遭った場合の問題点について
- 国民/厚生年金、労災年金の受給停止期間について
- 死亡事故で将来老齢基礎・厚生年金の逸失利益の請求を忘れていませんか。
- 大型トラックによる左折巻込み事故を防ぐために
- こくみん共済COOP(全労済)の不誠実かつ誤った対応について
- 令和3年9月までの全解決実績を更新しました
- 自転車高齢者の死亡事故を防ぐために~ヘルメットを着用しましょう!
被害者側
交通事故専門弁護士による
ブログ
保険会社や病院の不適切な対応から専門家向けの高度な知識など、交通事故被害者にとって重要な情報を惜しみなく提供し、被害者側交通事故賠償実務の発展・向上に努めています。
-
国民共済coopの度重なる回答遅延について(顛末記あります)
-
子どもや若年独身者の死亡慰謝料の基準を見直すべきです
-
㈱光文社様「FLASH」年末年始特大合併号(令和6年12月24日発売)記事掲載
-
ドライブレコーダー映像・音声データの改ざんについて
-
相談センターの示談あっ旋と紛セの和解あっ旋の違いについて
-
公益財団法人紛争処理センターの和解あっ旋を利用し驚いたこと
-
大分市194km暴走死亡事故で、危険運転致死罪が認められました
-
危険運転致死傷罪の見直しの評価と大分市の時速194km暴走死亡事故について
-
良い損害保険会社(共済)とは~当事務所での損保会社(共済)ごとの示談成立率について
-
「痛いからまだ通院したい」は正しいのでしょうか~通院の必要性と症状固定時期について~