死亡事故について
糖尿病患者の方々が重大交通事故被害に遭った場合の問題点について
本日大変悲しく辛い連絡がありました。
依頼者様が駐車場内での自損事故によりお亡くなりになったとのことです。
依頼者様は相手方の信号無視により足に重大な麻痺を残し、長年症状に苦しみ抜き、ようやく待ちに待った示談が成立し、後は入金を待つのみでした。
まだ40代と若かったのですが、事故前より糖尿病の投薬治療を受けており、本件事故による長期の入院後、糖尿病が悪化し透析を要する状態になってしまいました。
自損事故の原因はまだわかっていませんが、糖尿病による意識障害が生じた可能性も考えられます。
亡くなった日の当日に依頼者様から当事務所に電話でご連絡をいただいていたのですが、直接お話ができなかったことを悔やむばかりです。
弁護士丹羽は、先日新聞社から取材を受け、糖尿病患者の方が起こした事故で無罪判決が出たことにコメントをしたばかりですが(こちら)、糖尿病患者の方々が重大被害事故に遭った場合も大きな問題が生じています。
実は、当事務所にご依頼をいただき、事件継続中に糖尿病の合併症(今回の件でははっきりしていませんが)でお亡くなりになったのはこれで3件目です。
糖尿病患者の方が直接は死因となり得ない交通事故被害に遭い、その後、糖尿病が悪化し死亡することはしばしばみられ、民事裁判でも交通事故と死亡との間の因果関係が良く争われています。
入院中は糖尿病食が供され、血糖値も厳重に管理されていますので、数値上は、糖尿病は改善されたかにみえることもあります。
そのため、交通事故と直接の死因となった糖尿病に起因する腎不全や心筋梗塞等の血管疾患との相当因果関係を証明することは困難を極めます。
しかし、事故により直接の内臓への外傷がなかったとしても、甚大な身体への衝撃により臓器に相当なダメージが生じたり、出血や投薬、輸血、手術等により心臓や血管などの循環器や腎臓に著しい負担をかけていることは明らかです。
また、事故後の長期の入院生活で筋力は衰え代謝能力は著しく減退するなど、血糖値やインスリン量などの通常の入院中の検査上の数値では表れにくい糖尿病及びその合併症の危険因子は見えないまま増大しています。
幸いにして交通事故外傷が改善しようやく退院できたにもかかわらず、そのような代謝能力が衰えた状態で、十分な運動もままならないまま日常生活に復帰することで一気に糖尿病が悪化することがしばしばみられます。
私が経験した3例中1件は退院後に自宅に帰ったわずか数日後に意識を喪失して再入院しそのまま入院中にお亡くなりになりましたし、2例は退院後糖尿病が急速に悪化しました。
糖尿病の方々が重大な交通事故に遭い入院を余儀なくされた場合は、入院中に数値が改善したからと決して安心せず、むしろ退院後ほど、事故前以上に糖尿病管理に気を付けていただければと願っています。
本件の依頼者様のご冥福を心よりお祈りいたします。
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