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東京海上日動火災保険株式会社につきましては、争うべきところはしっかりと争う反面、
その他の損保会社と違い、争いのない事案については、徒に保険金額を出し渋ることもなく、
比較的適正な示談額を提示してくる、最も良心的な損保会社でした。
この点について、以前同社の役員を務めた方が、
「東京海上は、全社員が東京海上としてのプライドをもって、保険金を支払うようにしている。」
と話していたことが印象深く思い出されます。

訴訟に至ることなく、示談交渉により、適正かつ公正な賠償を受け、早期に事案が解決することは、
交通事故で辛い思いをされている被害者の方々にとって、非常に大切なことと考えておりますが、
東京海上も、このことを良く理解していると、私は認識しておりました。

今回の事案は、家事従事者が自賠責により後遺障害等級の認定を受けたケースで、
依頼者に過失はなく、事故態様、症状内容、治療経過とも問題なく、「争いのない事案」といえるものです。

当方が、いわゆる裁判基準での計算書を提示し、示談を提案していたところ、
同社名古屋損害サービス2部1課の担当者は、驚くべき回答をしてきました。

・家事従事者としての休業損害は認めない。
・後遺障害部分については、逸失利益及び慰謝料を含め自賠責保険金の範囲に限る。
これに対し、当方は、
「これまで東京海上とは幾度となく交渉を重ねてきたが、このような不当な提示は初めてである。
そのように主張される理由があれば、具体的に指摘すべきである。」旨回答をしましたが、
担当者は、はっきりとした理由も示さず、現状、回答はこの限りであると繰り返すばかりでした。

当事務所において、自賠責で後遺障害の認定を受けた争いのない事案で、相手方損保会社から、
「後遺障害部分を自賠責保険金に限る」との対案の提示を受けたことは、SBI損保以外にありません
(なお、この事案で、SBI損保に対しては訴訟を提起し、14級相当・逸失利益を3年とし後遺障害慰謝料を110万円とする訴訟上の和解を成立させました(平成26年9月))。
東京海上が、しかも、名古屋という比較的大きなサービスセンターで、
このような極端な提示(相手方に弁護士が付いたとしても有り得ない金額です。)をしてくるということは、東京海上でさえ、支払い保険金の引き締めにかかってきたと考えざるを得ません。
このような任意保険会社としての社会的意義を放棄するような流れが、東京海上だけでなく、損保会社全体の流れにならないことを願うばかりです。

本件は訴訟提起していますので、結果が出次第報告いたします。

~追記~
本件は平成25年12月に名古屋地裁に250万円の支払いを求め訴訟提起し、相手方に一時停止規制のある交差点での出合頭の事故であったため、主に過失割合と後遺障害逸失利益を争点として、9回の訴訟期日を経て、平成27年2月、180万円の支払いを認める訴訟上の和解に至りました。

相手方弁護士は、訴訟では、過失割合について当方5割を主張し(物損は当方2割で解決済み)、通院慰謝料につき事前交渉時の提示額をさらに6割減額をし、後遺障害は非該当、頚椎椎間板の膨隆が既往症であるとして既往症減額50%とかなり無茶な主張をしてきました。
和解では、基準どおり過失割合当方20%、後遺障害逸失利益については、問題なく14級相当5%・5年で認められました。

東京海上が、事前交渉や訴訟でこのような主張をするのはおかしいなとは思っていましたが、相手方が大手自動車ディーラーであり、顧客の自動車を運転中の事故であったため、大口の取引先であるディーラーに配慮して、このような主張をしてきたのではないかと私自身は考えています。


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