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令和6年3月7日、独立行政法人自動車事故対策機構(以下「NASVA様」といいます。)名古屋主管支所主管支所長伊藤政信様と被害者援護員深川弘美様がご来所され、NASVA様の事業のご説明をいただき、意見交換をさせていただきました。

高島彩さんのテレビCMと、安全・安心・快適なクルマ社会をつくるために現れた妖精であるナスバちゃんでもおなじみのNASVA様は、自動車事故対策の専門機関であり、後に詳しく述べる交通事故被害者の支援のほか、自動車事故を防ぐため、運送事業者等に向けた指導講習や法で義務付けられた特定運転者に対する適性診断などの安全指導業務や、自動車事故から守るため、自動車やチャイルドシートなどの安全評価などの安全情報提供業務を行っています。

NASVA様は上記の「支える」、「防ぐ」、「守る」を3つの柱として、私たち市民がこの車社会を安全かつ安心して生きていくために尽力され、大変残念なことに交通事故被害に遭った方々にとっても大変頼もしい機関です。

NASVA様のHPはこちら
業務説明会の愛知県弁護士会会報(SOPHIA)掲載記事はこちら

今回、NASVA様からご説明いただいた上記事業のうち、当事務所にとって最もかかわりの深い、NASVA様の被害者援護業務に関しご説明いたします。


1 療護施設の設置・運営 


当事務所のHPでも何度かご説明し、また、当事務所にご依頼いただいた被害者の方にも都度ご案内しご利用させていただいておりますが、交通事故による脳損傷後介護を要する重度の症状が生じた被害者の方に向け、特に高度な治療と介護を提供する、専門の療護施設を全国で12か所(令和6年4月現在)設置・運営されています。

ここ東海地区では、岐阜県美濃加茂市に所在する中部療護センター(50床)及び愛知県豊明市に所在する藤田医科大学病院(委託病床・10床)が設置されており、高度医療機器に基づいた先進的かつ手厚い専門的な医療や介護が受けられます。
  
これら療護施設には、最長3年間の入所が可能であることは被害者のご家族にとって大きな利点です。
一般の医療機関では、原則として回復期病棟に最長で180日しか入院できず、その後は介護施設に入所するか自宅介護を選択しなければなりません。
被害者のご家族は、被害者が急性期を脱し命に別条がないことに安堵する暇もないまま、回復期病棟に入院するや否や、すぐに次の施設を探したり自宅介護の準備を整えたりしなければならず、このことがご家族の身体的にも精神的にも大きな負担になっており、弁護士丹羽は。現在の交通事故賠償の大きな問題の一つと考えています。
また、残念ながらすべての病院で同じような治療や検査、リハビリ、看護が受けられるとは限らず、特に高次脳機能障害を生じた場合では、この症例への理解が不十分であったり、その方にあった作業・言語療法が受けられるかにはかなりのばらつきがあるのが現実です。
さらに、回復期病棟の退院後、生活能力の回復に必要な治療やリハビリが全くなされていないケースもよく見られます。

NASVA様の療護施設に入所できれば、このような心配や不安を抱くことなく、ご家族の方々も安心して被害者の方の回復に専念できます。
なお、従前では療護施設には重度脳損傷を負った方しか対象にしていませんでしたが、今後重度脊髄損傷を負った方も受け入れることになるとのことです。

(R6.5.15追記 R6.5.15現在、重度脊髄損傷を負った方については、東京及び福岡の療護施設で試験的に受け入れを行っている状況で、当中部地方ではまだ受け入れは開始されておらず、また、中部療護センターは遷延性意識障害を対象としているため、今後も脊損の患者様を受け入れる予定はないとのことです)。

また、通常は救急搬送された病院での急性期を脱した後、各療護施設に入所することが一般的ですが、藤田医科大学病院については、原則として事故後30日以内の急性期の方しか受け付けていないので注意が必要です。

NASVA様の療護施設について詳しくはこちらをご覧ください。 


2 在宅介護支援~介護料・助成金の支給


NASVA様では、自賠法上の後遺障害等級別表Ⅰ第一の第1級1号、第1級2号、第2級1号又は第2級2号に該当する重度の後遺障害を負い介護を要する被害者様に対し介護料を支給されています。

支給対象となる方は、症状の重篤度に応じて、特Ⅰ種からⅡ種の3段階に分かれ、月額¥211,530(特Ⅰ種最高額)から¥36,500(Ⅱ種最低額)の支給が受けられます。
対象となる費用についても、訪問看護等在宅サービス、介護用品や消耗品等の購入と介護の必要な費用を広くカバーしますし、この介護料は賠償から差し引く必要はないので(損益相殺の対象外)、費用面で安心して在宅介護に臨むことができます。

その他、介護者のレスパイト目的で短期入院・入所等のショートステイをした場合、移送費・室料差額・付添費等が支給される「短期入院・短期入所費用助成制度」もございます。

回復期病棟を退院後、在宅介護をされることを決めた段階で、自賠責保険に対する後遺障害申請前から、NASVA様にご相談いただき、後遺障害認定後すぐに介護料の支給を受けられるよう準備をしておくといいと思います。
なお、介護保険、労災保険などの社会保険とは重複して利用できません。

NASVA様の在宅介護支援について詳しくはこちらをご覧ください。


3 その他被害者支援制度


①相談対応・情報提供

各主管支所に在宅介護相談窓口が設置され、看護師や介護福祉士などの有資格者が、在宅介護の不安等の相談に乗ってくれます。


②訪問支援


NASVA職員さんが、介護料受給者の自宅等を訪問し、直接被害者やご家族のニーズを聞き取り情報を提供しています。


③交流会の開催


介護料受給者及びそのご家族等が、悩みを話し合い情報交換をされる交流会を実施しています。
交通事故被害者及びそのご家族の方々の悩みや不安は、同じ思いをした方にしかわかってもらえないので、このような場を積極的にご利用いただき、不安を取り除いていただければと存じております。


④交通事故遺児への支援


生活に困窮している交通事故遺児への支援のため、無利子貸付けを実施し、また、交通遺児友の会では、様々な遺児への支援活動を行っています。

NASVA様へのお問い合わせは以下のとおりです(交通事故被害者ホットライン・HPはこちらです)
お電話(平日10:00~12:00 13:00~16:00)0570-000738 03-6853-8002
メール https://www.nasva.go.jp/sasaeru/hotline/form/step1.html


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