blog

(HP https://parupunte-life.com/archives/23005 より引用)

重大な死傷結果をもたらす大型トラックによる左折巻込み事故が多発しており、これを防止するため、改正道路運送車両の保安基準の施行により、令和4年5月から新型車として販売される車両総重量8t以上の大型トラックに、左折巻込み防止装置(側方衝突警報装置)の設置が義務付けられました。

当事務所でも令和4年6月3日に中日新聞に取材いただいた記事が掲載されたことを受け、皆様に左折巻込み事故の悲惨さや当事務所で取り扱った件でのトラックドライバーの悪質性などをお伝えし、皆様に十分ご注意いただくようお知らせいたしました(記事はこちらをご覧ください。)。

ところが、このような国を挙げての左折巻き込み事故の防止への取り組みをあざ笑うかのように、改正法規の施行直後の令和4年6月7日、三重県津市内で違法改造を施した左折ダンプカーに自転車の男子中学生が巻き込まれ死亡するという大変痛ましい事故が起きてしまいました。


このドライバーは、「ダンプの改造が趣味」と供述しているとおり、サイドミラー類を前方に大きく張り出し、後部バンパーを張りだし、ウィンカーの点滅速度を著しく遅くするなど、ダンプカーに保安基準違反を含む多数の改造を施しており大変目立ち、また、地域でも危険で乱暴な運転をすることで知られていたようです。

さらに悪質なのは、助手席下の安全窓に保安基準に違反するスモークフィルムを貼付したうえ、助手席に大きな道具箱を置くなどして、完全に安全窓の見通しを妨げていた点です。
安全窓を塞いで左折巻き込み事故を起こした点については、先の記事でお知らせしたトラック運転手と同様です。


このドライバーは自らの手で、周囲からウィンカーを見にくくし、サイドミラー類での左後方確認をしにくくし、安全窓による左後方視界を無くし、大変危険な状態だったにもかかわらず、すぐ先に小中学校の校門があり下校途中の学生らも多数通行する可能性があった平日の午後3時に、わずか6.5mの狭小路に向けて14㎞/hの高速度で左折し、被害者の中学生を巻き込みました。

被害者はこの現場のすぐ先の中学校に通う1年生の男の子で、通学のためにご両親にねだって買ってもらった高価な自転車をとても大切にして、しっかりとルールを守り、生物が得意で運動も趣味も積極的に頑張っている誰がどう見てもとても良い子で、友人にも恵まれようやく中学校生活にも慣れてきた矢先のことでした。

被害者は、対面青色信号にしたがい自転車で横断歩道を横断しようとしただけで何らの過失すら認められないにもかかわらず、大切な自転車ももろともダンプの車底部に巻き込まれ、ヘルメットが大きく変形するほどの頭部に甚大な損傷を受け心肺停止状態で救急搬送されました。

一人息子や初孫を失ったご両親や祖父母、親族・友人、学校関係者の皆様のご心痛や悔しさ辛さは筆舌には到底尽くせません。

他方、このドライバーは自らの手で被害者の瀕死の状態に陥れながら、トラックの前に立ち携帯電話で勤務先に電話をするだけで、被害者の救護や周囲の安全確保に尽くすことも被害者の安否すら確認することすらせず、目撃者には、まさかこの男が加害者だったとはわからなかったとのことです。
さらに、悪質なのは、ご遺族の面前や刑事裁判の法廷でも事故後車の運転をしない、していないと供述しながら、事故後自ら車を運転し通・退勤していることを幾度となく目撃されている点です。

いくら法改正をしても、左折巻き込み防止装置が搭載されても、結局事故を起こすのはドライバーの意識一つです。
しかし、今もどこかの公道を走行しているわずかな想像力や順法意識が欠如した悪質なドライバーにいくら事故の悲惨さや交通ルールの順守の徹底を諭しても、聞く耳すらもたないでしょうし、その意味も想像できないだろうと弁護士丹羽は考えています。
今でも助手席下に荷物を置き安全窓からの見通しを塞いでいるトラックをよく見かけます。
左折時に左後方・下方の安全確認をしっかりすること、安全窓を塞がないこと、ウィンカーを見にくくするような、左後方下方の安全を十分確認できないような安全性を損なう改造をしないこと、どれも通常の理解力のある人なら全く難しいことではありません。

にもかかわらず、つい先日の令和5年8月19日、四日市市で中学生が左折してきたミキサー車に巻き込まれ死亡するという大変痛ましい大型トラックによる左折巻込み事故がまた起こってしまいました。
この記事を書いている令和5年9月7日、浜松市でも左折大型トラックによる自転車巻込み死亡事故が生じたとのことです。

大型トラックによる左折巻込み事故は一度起こせば重大な死傷結果を生じさせる大変危険な事故類型です。
令和4年の大型トラックの対自転車に対する死亡事故の原因の半数以上が左折巻き込み事故です(57.1%・JTA/ITARDA こちら)。

大変残念なことながら、このような左折巻込み事故に遭わないためには、『同一方向を走行し左折してくる自動車、特に大型トラックは自分に気付いていない』ことを肝に銘じて、左折してくるトラックが完全に止まるまで待ってから横断するなど、被害者自らが自衛するしかありません。


シェアする

ブログの記事一覧へ戻る