被害者側交通事故専門弁護士によるブログ
こくみん共済COOP(全労済)の不誠実かつ誤った対応について
全労済/こくみん共済coopの酷いと感じる対応が近時頻発し看過できないほどになって参りました。
現在、全労済が関わる交通事故案件に携わる皆様や、共済契約をされている/検討されている皆様への情報提供の一貫として、ご紹介いたします。
1 人身傷害補償についての不適切な誤った対応
本件は、依頼者様が全労済に加入している事案で、自賠責で外貌に相当程度の障害を残したものとして9級16号の認定を受けた方で、相手方外国人が無断で帰国してしまったため、相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起しても、相手方の居所の調査や送達等で大変時間がかかることを考慮し、事情を詳細に説明したうえで先行して全労済に対し人身傷害共済を請求をすることにしました。
これに対し、全労済愛知損調SCの担当者は、以下の内容を記載した冒頭の左の画像のFAX書面を送付し、人身傷害共済を支払わない旨通告してきました。
①「人身傷害補償では顔面部の醜状痕の場合、逸失利益は無いものとして算定致します。」
まず、この点についてですが、全労済の約款(事業規約)を見ると、自賠法施行令別表Ⅰ及びⅡと同じ等級表が挙げられており、当然のことながら、醜状障害も7級12号、9級16号、12級14号にそれぞれ記載されています。
そして、人身傷害補償条項損害額基準には、後遺障害の等級は上記表によるとしたうえで、自賠法と同じ割合の「労働能力喪失率表」を挙げ、後遺障害逸失利益は、「原則として」、収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間で算定すると明記されています。
以上の約款の記載からすれば、まずは「原則として」醜状障害であっても逸失利益が認められるとしか読めず、醜状が労働能力に影響を及ぼさないような例外的な事情がある場合に、逸失利益を否定することも可能ということになります。
ですので、この全労済担当者のように、「人身傷害補償では顔面部の醜状痕の場合、逸失利益は無いものとして算定致します。」とは到底言えないはずで、一般の方であれば、そういうものかと誤解してしまう問題ある表現だと考えられます。
ただ表現の適否は措いておくとして、この点は、通常どの共済/保険会社でも主張してくるところですのでやむを得ないとしても、この担当者の一番の問題は、以下の点を挙げ支払いを拒否した点です。
これは保険・共済約款を全く理解していない虚偽の理由です。
②「対人社の○○様におかれましては契約者が帰国したからといって損害賠償賠償責任が無くなることはなく、対人社への直接請求が可能と思われます。」として、わざわざ全労済の約款を送付してきました。
直接請求権とは、賠償を負うべきすべての被保険者の破産・生死不明・死亡の事情が生じた場合に、被害者が保険会社に対し直接、対人・対物賠償保険の支払いを求められる権利ですが、そもそも本件では、相手方が母国に帰国しただけであり、直接請求の要件には当たりませんし、担当者から送付されてきた約款を確認しても、「所在不明」、「出国」などの本件で直接請求が可能な要件は全く見当たりませんでした。
もちろん、相手方に対し訴訟を提起して、その判決が確定すれば直接請求の要件は満たしますが、外国送達が必要になる本件では相手方に対して訴訟を提起することは本件では至難の業で、大変な労力と時間がかかります(コロナ禍で相手の母国への郵送は船便に限られており、本件でも宅配便を利用して判明した相手方母国住所地に書類を送付しましたが、1年が経過しても届いたかは不明な状況で、所在確認もできませんので公示送達による判決も困難な状況です)。
何より最も大きな虚偽は、人身傷害共済は相手方保険会社への直接請求の可否とは何ら関係なく、請求できるものであるということです。
そこで、担当者に上記点を挙げて、いずれも人身傷害共済を支払わない理由に当たらないという点を丁寧に説明したつもりでしたが、再度1か月後に送付してきたのが、上記の右の書面です。
私は前回とほぼ同じ内容の書面を見た時、担当者のレベルの低さと理解力のなさ(敢えてかもしれませんが)、弁護士である私に対してでさえこのような対応を平気でとる想像力や危機感のなさにほとほと呆れ果て、顧客であるはずの契約者にさえ、何らの理解も配慮も示さない、全労済の悪質とも思える体質が浮き彫りになったと感じました。
2 全労済の組織的な不誠実な対応
上記の人身傷害補償を巡る問題は、単に担当者の資質だけの問題として一笑することもできたかもしれませんが、全労済の組織全体が不誠実であると思わざるを得ない事例がありました。
1と同じ事案で、全労済に対し人身傷害補償共済金支払い訴訟を提起することになりました。
ただ、皆さんも実感されていることと思いますが、全労済の名称は他にも「こくみん共済COOP」などがあり大変ややこしく、ホームページを見ても改称をしたのか一見して分かりませんでした。
ホームページにも、『今後は「こくみん共済 coop」の使用を基本としますが、皆さまに充分認知いただくまでの間は、これまでの名称「全労済」も併用いたします。』との記載もあり紛らわしくて仕方がありません。
訴訟を提起する際には、訴状に正確な全労済の正式名称・代表者氏名・肩書を記載し、登記されているのであれば代表者事項証明書を提出しなければなりませんが、これらの情報は全労済のホームページを見てもよくわかりませんでした。
これらの正確な情報を得るためには、全労済に問い合わせることが最も確実であることから、ホームページ上のWEB問い合わせを利用し、全労済に訴訟提起を行うことを明記したうえで、上記事項を教示してもらうことにしました。
これに対する全労済のメールでの回答は以下のとおりです(全文そのままです)。
丹羽 洋典 様
こくみん共済 coop ホームページへのお問い合わせをいただき誠に
ありがとうございます。
ホームページへお問い合わせをいただいた件につきましてメールで
ご回答をさせていただきます。
当会に対し訴訟提起される場合、原告側にて必要書類を準備します。
正式名称や本部所在地はホームページに掲載しており、それをもとに
登記簿の取得等のお手続きが可能と存じますのでホームページにて
ご確認をお願いします。
お手数をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。
以上
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こくみん共済 coop<全労済>
お客様相談室 ℡0120-603-180
受付時間 平日 9時~17時
http://www.zenrosai.coop
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組織の正式名称でさえ一見して明らかではないホームページを作成しつつ、しかも、容易に回答が可能な事項であるにも関わらず、「お客様相談室」という組織を対外的に代表する部署が、このような嫌がらせとも思えるメールを平気で送付してきたことで、全労済は社会的責任を放棄した無責任な体質であることを実感しました。
3 (公財)日弁連交通事故相談センター示談あっ旋への不理解
全労済は、日弁連と協定を結び、交通事故相談センターでの示談あっ旋を実施し、審査での評決を尊重することになっている共済です。
1及び2とは別件ですが、全労済愛知損調SCを相手方共済とし、特段の争点はなく金額の評価だけの事案の事前交渉で、弁護士費用と遅損金を除いた当方の請求額445万円に対し、全労済の回答は320万円程度と120万円近い金額の差があったため、示談交渉での解決は難しいと判断し、交通事故相談センターの示談あっ旋を申し立てた事案です。
示談あっ旋の最初の期日で、担当委員は当方の請求をほぼ認めた423万円のあっせん案を示しましたが、全労済担当者は、示談の成立に難色を示し、担当委員に対し、「あっせん案には応じられないので、紛センでも訴訟でもなんでも提起して欲しい」と言ったそうです。
そもそも、本件で紛センに申し立てる意味は全くないですし、審査に移行すれば全労済はその判断を尊重することになっていますので、当方には訴訟を提起するメリットもありません。
この点で、全労済の担当者は、協定共済であるにもかかわらず、交通事故相談センターの示談あっ旋の意味を全く理解していないことが明らかになりました。
そこで、担当委員から、改めて審査制度の趣旨説明をしていたただいたうえで、審査に移行すれば全労済には審査委員の判断を尊重することになっていること、審査でもあっせん案の金額から大きく動くことはないと思われることが伝えられ、担当者は423万円のあっせん案をもちかえって検討することになりました。
当方は上記あっせん案には何の異論もありませんでしたので、担当者に対しあっせん案に応じる旨を通知しました。
その後、次回期日までに担当者から何の連絡もなかったので、当方も担当委員も次回のあっせん期日で示談が成立すると思い込んでいました。
本件ではわざわざ審査に移行し、審査委員の判断を仰がなければならないほどの争点はありませんし、審査移行したとしても、あっせん案から大きく減額される事情もなさそうですので、担当者も賠償のプロとして良く分かっているのであれば通常であればここで示談が成立する案件です。
にもかかわらず、担当者は2回目の期日で突如、「稟議が通らなかったので不成立として欲しい」と申し出ました。
担当委員も呆れた様子ながらも、説得をしてくれましたし、理由を聞いてくれたようですが、「稟議が通らない」の一点張りだったようで、結局審査に移行せざるをえず、即時に審査を申し立てました。
審査では、事前にあっせん担当委員が予想していたとおり、審査委員からあっせん案と同じ金額が示され、現在、再度担当者の回答を待っているところです。
仮に担当者が示談を拒否したとしても、あっせん案の金額で尊重義務がある評決が下されることは目に見えています。
事前交渉を開始したのが、令和3年7月、示談あっ旋を申し立てたのは同年12月で、次回審査期日は令和4年6月ですので、すでに事前交渉開始から10か月以上が経過してしまいました。
(後日談:結局全労済も423万円のあっせん案に応じる姿勢を示し、本件は令和4年6月の第2回審査期日で評決に至ることなく、無事和解が成立しました。)
もちろん、このケースでは全労済は何ら違法な行為はしていませんし、当然認められた行為をしているだけです。
しかし、このように全労済担当者の無知や決裁権者の判断力のなさと思われる事情により、徒に解決を先延ばしにされた依頼者の利益についてどう考えているのか、何をもってこのような無駄な先延ばしをしているのか、全労済に何のメリットがあるのか、全労済の対応は全く理解不能ですし、本事例では、被害者のことなど一顧だにしないと思われるこの組織の姿勢を物語っていると私は考えています。
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