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赤信号無視の車両から衝突を受け、脊髄損傷を生じ下半身が麻痺し自力歩行が困難となった依頼者が、主治医の先生の許可を得たうえで、鈴鹿ロボケアセンターにて、装着型サイボーグHAL®による歩行訓練(Neuro HALFIT)体験に行かれるということで、令和3年6月30日、弁護士丹羽も同行させていただき、その実施方法や効果を確かめて参りました。

結論としましては、わずかな体験の時間であったにもかかわらず、依頼者は相当程度効果を実感し、実際にプログラムを利用したいとの希望を持たれました。

弁護士丹羽も、歩行支援ロボットによる機能訓練は、再生医療と同じく今後目覚ましい進歩を見せ、脊髄損傷を負った方の治療やリハビリの中心になっていくと考えており、より多くの脊髄損傷や脳損傷後の麻痺に苦しむ患者様に、失った能力を少しでも回復していただければとの思いで今回の体験の様子を記します。

装着型サイボーグHAL®とは


装着型サイボーグHAL®は、筑波大学で開発されCYBERDYNE株式会社で製造されている外骨格型装着ロボットで、医療機器として認可された初のロボットです。
HAL®の特徴は、装着者の神経筋活動を感知する生体電位センサを有し、センサにより装着者の運動意図を感知し、股関節や膝関節等のアクチュエータが作動し関節運動を補助してくれる点にあります。

つまり、HAL®は装着者の筋肉や関節を動かしたいという意図を読み取って、その筋肉や関節の動きをモータの力で補助し、通常の筋・関節運動を実現してくれるのです。
このような装着者自らの意思で麻痺した部位を繰り返し動かすことで、脳・神経・筋系の機能に学習効果を与え、各機能を回復する効果を目的としています。

そして、全国16拠点(R3.7現在)にあるロボケアセンター(各拠点はこちらを参照ください。)では、HAL®を利用した機能訓練を実施しており、今回訪問させていただいた鈴鹿ロボケアセンターは、鈴鹿医療科学大学千代崎キャンパス内に設置された日本で最初のロボケアセンターになります。
鈴鹿ロボケアセンターでは開設以来8年間にわたり、約330名の方のトレーニングを実施してこられましたが、この間、訓練中の事故は全く生じていないとのことです。

体験の流れ


HAL®の体験訓練の前に30分程度カウンセリングが実施され、病歴や現在の症状などの詳しい聞き取りがあります。
その後、リハビリ服に着替え、血圧を測定し、理学療法士の先生により、各関節の可動状況の確認とストレッチなどが実施されます。

まずは単関節タイプから


依頼者は両足指は動くものの、両股関節・両膝・両足首の自動での可動を失いました。
そこで、HAL®による機能訓練体験は、まず足関節の単関節タイプからはじまりました。

両足首にHAL®を装着し、足首の屈曲・伸展運動を繰り返しながら、適宜ノイズを取り除きながら補助力を調整していきますが、痙性による電位のノイズやはじめてのHAL®の装着ということもあり、依頼者はスムーズな可動や自ら動かしている感覚はあまり得られなかったようです。

これはHAL®での訓練を繰り返して慣れていくことで、改善されていく点だと思われますし、HAL®による痙性緩和効果も期待できるようです。
30分ほど単関節タイプでの訓練後、いよいよ、自立支援用下肢タイプによる歩行訓練体験に移ります。

HAL®下肢タイプによる歩行訓練体験


まず、車いすから吊り下げトレッドミルに乗り換え、自力での歩行の状況を確認します。
自力での足を前後に出す運動は、両手で力強く身体を支えながらもかなり辛そうな様子でした。

その後、HAL®自立支援用下肢タイプを装着した歩行訓練に移ります。


HAL®を装着後、トレッドミル上でまずは左右の体重移動と足をあげる動作の練習をします。
すると、体重移動や片足立ちがスムーズにでき、依頼者も「これ自分でやってんの、うそー。」と、とても驚いた様子でした。


いよいよ、歩行訓練です。
片足に体重をかけた状態で、手動でトレッドミルを動かすと、見事に右足が前に出ました。
これには依頼者も「うわっ、歩いたよー!」と思わず声を挙げました。
その瞬間、依頼者にとって自ら歩く感覚を事故後初めて実感したでしょうし、見ていた私もお母さんも思わず「おぉーっ」と声が上がり、目が潤みました。


その後、トレッドミルを低速で動かすと、まるで普通に歩いているかのように、力強く両足が一歩一歩前に踏み出されていきます。
10分ほど訓練を続けると、姿勢も良くなり徐々に踏み出す歩幅も大きくよりスムーズになってきました。


その後、HAL®スーツを外し、再度自力での歩行の状況を確認しました。
すると、わずか数十分前の訓練前よりも、明らかに足が前に大きく出るようになりました。


体験を終えて

体験は2時間程度で終了しました。
今後、痙性によるノイズを調整していき訓練に慣れていけば、よりHAL®によりスムーズな補助が期待できるようになるそうです。
また、訓練を継続することによって痙性の緩和効果が得られるようになるそうです。
依頼者もこのわずかな体験訓練によって、その効果は確かに実感できたようです。

何より、自分の意志と力で歩くという経験を取り戻したことは、依頼者の今後のリハビリにも大きな自信となり、まずは「杖を使って自分で歩きたい」という人生の大きな夢にまさに「一歩ずつ」近づいたことと思います。
そして、依頼者も目を輝かせながら、「また来たい!」と声を弾ませていました。

ロボケアセンターでのHAL®による機能改善プログラム「Neuro HALFIT」の費用は、60分¥15,000、90分¥18,000と多少高額ですが、依頼者は障害者福祉による助成で10回まで3分の1の自己負担額で利用できるとのことです。

今後弁護士丹羽は、主治医の先生やロボケアセンターの皆様方と協力し、依頼者に対する改善効果を実証したうえで、相手方損保会社から、HAL®による訓練費用を治療費として内払いしてもらうために交渉を尽くし、依頼者が費用に不安を持つことなく、HAL®による訓練を実施できる環境を整え、依頼者が自分の力で歩くという夢を実現するため尽力して参ります。

最後になりましたが、鈴鹿ロボケアセンター長・竹腰様、理学療法士・藤田先生、今回は大変お世話になり誠にありがとうございました。

令和3年10月6日追記

HAL®による既支出分の訓練費につき、無事、相手方保険会社から全額の保険金の内払いを受けることができました。
相手方損保会社担当者様におかれましては、難しい判断もあったこととは存じますが、依頼者様がおかれた状況を十分ご勘案いただいたことに厚くお礼を申し上げます。

今後、どこまで訓練費用の内払いが認められるか、最終的な示談時に治療費名目で損害が認められるか、裁判所にHAL®でのリハビリ費用が症状の改善・保全に必要かつ相当であると認められるかについて、関係各所のご指導とご協力をいただきながら、引き続き尽力して参りたいと考えています。


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