被害者側交通事故専門弁護士によるブログ
過剰診療と通院(傷害)慰謝料について
過剰診療にご注意ください
最近、頚・腰椎捻挫・打撲等のいわゆるむち打ち損傷などの症状で、毎日であったりかなりの高頻度で通院されている方が増えている感がございます。
当事務所にご相談に来ていただいた方にご事情をお聞きすると、通院(傷害)慰謝料についての誤った理解がその一因となっている可能性があります。
毎日通院しても、必ずしも通院慰謝料が増えるわけではありませんし、毎日のように通院する必要性や相当性がない場合にも高頻度で通院していると、いわゆる過剰診療の問題が生じますのでご注意ください。
過剰診療の問題点
交通事故賠償実務上、治療費が認められるためには、通院の必要性及び相当性(以下「必要性等」といいます。)が認められることが必要となります。
すなわち、通院加療により症状の改善効果があること(必要性)、治療内容や通院頻度が適正であること(相当性)が認められなければなりません。
必要性等が否定され、過剰診療であるとされた場合には以下の問題が生じます。
1 治療費の自己負担
治療の必要性等が認められない場合、支払った治療費は自己負担となります。
相手方保険会社が治療費を内払いしていた場合は、慰謝料などからその分が差し引かれてしまいます。
2 被害者側の必要性等の証明責任
相手方保険会社や弁護士などから通院の必要性等が否定された場合、裁判でその必要性等を認めてもらうことになりますが、その証明責任を負うのは被害者側です。
すなわち、毎日通院していたとしたら、週2~3日の通院では不十分で、毎日通院しなければいけなかった事情や、毎日通院していたことで、より症状の改善効果などがあったことを証明しなければなりません。
その場合、主治医の先生のご見解がもっとも重視されますが、実際に主治医の先生に、高頻度で通院しなければならないことの証明にご協力いただけることはさほど多くありませんし、現実問題として、週2~3回の頻度の通院と週5回の通院頻度では、改善効果が違うということを医学的に証明することは非常に困難です。
3 早期の治療費打切りの可能性
その適否は別として、相手方任意保険会社は、自賠責の傷害部分の保険限度額である120万円に達するまでは、自賠責保険から回収可能なので、治療費や休業損害などの傷害部分の損害についても、その支払額が120万円に達するまでは、比較的問題なく内払いに応じてくれます
しかし、毎日通院して任意保険会社の治療費の支払額大きくなるほど、その分、傷害部分の限度額に達するのも早くなるので、早期の治療費の打切りにあう可能性が高くなります。
原則として、通院頻度によって通院(傷害)慰謝料額は変わらない
先に述べましたとおり、毎日通院している方には、通院慰謝料についての誤解がある方もいらっしゃいます。
すなわち、よくあるホームページの記載をみて、「1日通院したら8400円の慰謝料がもらえるから、出来るだけ通院したほうが得だ。」と誤解しているのです。
確かに、自賠責保険の通院慰謝料の算定基準では、通院日数の2倍もしくは通院期間の少ない方に4200円(令和2年4月1日以降の事故については日額4300円)を乗じて算出しますので、上記の通院慰謝料が日額8400円というのは間違いではありません。
しかし、この通院慰謝料の算定方法は、あくまで自賠責保険の算定基準であり、相手方に任意保険会社がついている場合は、より高い任意保険会社基準もしくは弁護士(裁判所)基準で算定し、これらの基準では自賠責保険とは異なり、原則として通院日数ではなく通院期間で算定します 任意保険会社基準はこちら。
そして、その目安となる通院頻度は週2回程度を想定していますので、週2回の通院と週5回の通院では、通院慰謝料額は変わらないということになります。
以上のとおり、毎日通院したからといって、相手方任意保険会社との示談交渉や訴訟の場面では、週2、3回の通院と比して、必ずしも通院慰謝料が増額されるものではございませんし、上記のとおり過剰診療の問題が生じる可能性がございますので、十分ご注意ください。
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