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当事務所では、早期かつ適正な解決という観点から、過失割合の基礎となる事実関係に大きな争いがない場合や、自賠責での後遺障害認定等級とおりの後遺障害部分の損害を請求する場合などでは、公益財団法人日弁連交通事故相談センター(以下「日弁連相談センター」といいます。)の示談あっ旋や、公益財団法人紛争処理センター(以下「紛セ」といいます。)の和解あっ旋を利用することがあります。

本来ですと、手続面や解決内容の点で比較的使い勝手の良い日弁連相談センターを利用したいのですが、日弁連相談センターでは相手方が損保会社の場合、事実上の協力義務が生じる審査手続がありませんので、相手方が共済会社ではなく損保会社の場合、紛セの和解あっ旋を申し立てることがあります。

本日、紛セの和解あっ旋の第1回期日がありましたが、そこで驚いたことがございましたので、以下皆様に情報提供いたします。

申立事案は、自転車対四輪車の出会い頭の事故で、自転車の被害女性に神経症状12級のほか、後遺障害等級認定基準を満たさない、眼上20×15㎡の面上及び口唇上に10mmの線状の醜状痕並びに下肢に多数の醜状痕を残し、これらを理由とする慰謝料増額を主張したものです。

今回の期日の冒頭、嘱託弁護士(あっ旋を執り行う弁護士です)の先生は、『紛争処理センターでは、このような後遺障害にあたらない醜状を理由とした慰謝料の増額は通常認めない。このような主張があった場合は裁判することを伝えている。』と話されました。
これに対し弁護士丹羽は、「等級基準に満たない醜状痕を慰謝料で評価することは賠償実務上一般的に認められているし、非該当の後遺障害の逸失利益や慰謝料を直接求めているわけではない。」と主張しましたが、嘱託弁護士の先生は、「それは裁判の話で、紛争処理センターでは違う。」と回答されました。

この点、後遺障害認定基準を満たさない醜状痕について、いわゆる赤い本では「自賠法上の後遺障害に至らないか該当しない事例」として、青本でも「後遺障害等級非該当事例の慰謝料」、「非該当の後遺症が他にあることを考慮した例」との項目が設けられているとおり、慰謝料で評価されることは賠償実務上も常識です。
また、示談交渉段階でも、後遺障害等級評価されない醜状障害による慰謝料の増額が認められることも多々見られます。

何より、弁護士丹羽が現在愛知県支部の委員長を務めている日弁連相談センターでは、『相談は、裁判例の傾向、社会情勢、「交通事故損害額算定基準」(注:青本のことです)等に照らし行ってください』と嘱託弁護士向けの業務ハンドブックに明記し、毎年業務説明会を通じ嘱託委員に対し説明しておりますので、示談あっ旋手続では今回の紛セの対応のような、『後遺障害に当たらない醜状痕は慰謝料で評価しない』という門前払いの対応にはならないはずです。

弁護士丹羽は、紛セの和解あっ旋が『後遺障害に当たらない醜状痕は慰謝料で評価しない』という立場をとっているとのことであれば、和解あっ旋では一般的に認められるべき賠償費目が認められないという点で「中立公正な立場で和解あっ旋を行なっており」(交通事故紛争処理センターHPより)とは言えないと考えます。


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