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近時、歩行中や自転車走行中に、相手方自転車運転者からケガをさせられる自転車事故が増えており、当事務所でも対自転車事故の相談が増加しております。
そして、条例による自転車保険への加入義務付けや個人賠償責任保険等が広く普及したことで、対自転車事故でも任意保険が使えることも多くなりましたが、被害者に後遺障害が残った場合、対自転車事故での後遺障害認定はどのように行われるのでしょうか。

当事務所のHPでも、交通事故での後遺障害等級認定について広くごお知らせしておりますが、一般的に知られている交通事故の後遺障害認定手続については、自動車損害賠償保障法に基づくものであり自賠責保険加入の対自動車事故を前提としています。
他方、対自転車事故では自転車は自賠責保険に加入しておりませんので、一般的な自賠責保険に対する後遺障害等級認定手続は当てはまりません。

それでは、対自転車事故で損害保険が使える場合、どのようにして後遺障害等級認定を行っているのでしょうか。


1 自賠責調査事務所に対する有償での調査依頼


まず、相手方任意保険会社は、損害調査を行う損害保険料率算出機構自賠責調査事務所に対し、有償で等級認定を行ってもらうという方法で、自賠責での事前認定と同じような手続になります(自調の「後遺障害等級サポート」や「有償業務」と呼ばれます)。
この場合、自賠責保険と同様に一応公平・公正かつ専門的な機関である自賠責調査事務所が認定するので、認定結果についてはそれなりに信用性が認められると考えられます。
ただし、自賠責保険と違い、被害者側からの異議申立て手続はありませんので、認定結果に不服がある場合は訴訟を提起して裁判所で判断してもらうことになります。


2 関連調査会社での認定


例えば、東京海上日動火災保険株式会社では、東京海上メディカルリサーチ株式会社など、損保会社の関連調査会社に対し後遺障害認定を依頼する場合があります。
この場合は、自社の関連会社での認定になりますし、認定者がどの程度の専門性をもって認定しているか疑念は拭えませんので、公平・公正な認定がなされるとはいいがたい面がございます。
また、実際に当事務所で取り扱っている事案では、自社関連会社の等級認定であるにもかかわらず、相手方損保自らがその内容に不服であるとして、示談に応じず訴訟に至ったというよくわからないことも時折みられます。


3 自社認定


これは損保会社の自社内の調査部門で後遺障害等級を認定するというものです。
保険金を支払う損保会社が自分でその支払い額を大きく左右する後遺障害等級を認定するので、その認定結果はいわゆる「お手盛り」として疑いの目をもってみられてしまうのは仕方がありません。
平成29年10月以前のJA共済自賠責共済が調査事務所を介さず、すべて自社認定を行っており、後遺障害等級が非常に取りづらかったことを思い起こされます。
自社認定の場合は、特にその認定結果が妥当かをしっかりと吟味する必要があります。


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